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2007年5月22日

コラム004 原点回帰とダブルスタンダード

コラム4

かつてイタリアのナポリという町が、他国アルゼンチンからやってきた、左利きの小柄な青年を愛したように、この町の人々は、
ペルー国籍のストライカーを、
埼玉からやってきたシンデレラボーイを、
一時は、サッカーだ、サッカーだと言われながら、それでもなみいる「フットサルチーム」を倒し続けたフットサルチームからやってきた、若きキャプテンを愛している。

まだ1つもタイトルを獲得したこともない、まさに発足したてと言っても良いチームが、はっきりと自らが進む道を明言し、歩き始めた。

道の名は「三冠」。

発足当初は「プロ」という活動形態が取りざたされこそすれ、ほんの数ヶ月前に発足したFリーグの優勝チームの予想にでさえ、彼らのチーム名が出ることはなかった。
その後、1つタイトルを獲得する毎に、周囲のそれを疑問視する声は消えてく事となる。
そして今では、優勝候補筆頭と誰もが認めるチームとなった。

先に述べた、キャプテンである北原の前所属チームは、以前はプレイスタイルが「サッカーだ」「サッカーだ」と揶揄され、それでも結果を残すことで、認知度を高めていった。
今、同じく結果を残したオーシャンズが、今度は「つまらない」「面白くない」フットサルだと言われているらしい。
彼ら曰く、全体があまり動かないフットサルは古いそうだ。

私は問いたい。
ここはミラノかパリで、これはファッションショーなのか。と

急速なフットサル人口の増加と、情報の氾濫で、本来見るべきものを忘れてはいないだろうか。

つい最近まで、いや、もしかしたら今現在でも、
「フットサルをやるにあたって大切な事はなんでしょう」と問えば
「蹴ること」「止める事」
という声が聞こえてくる。
当たり前に、いかにそれを寸分の狂いもなく、瞬時に、プレッシャーの中で出来るかがレベルの高さだと。
実際そうではないだろうか。
誤解を恐れず言ってしまえば、
例えば子供達を指導するときに、丁寧に蹴る。正確に蹴る。考える。サポートする。など、基本的なことが大切だと教える指導者が多いのではないだろうか。
それを突き詰めていけば、こうなるという姿を見せてもらい、「つまらない」とは何事だろう。

一部の方々を除けば、「魅せるプレイをしなさい」、「流動的に動き、周りが歓声をあげ、巧いと息をのむようなプレイをしなさい」などとは決して言わないはずである。

好き嫌いはあるだろうが、日本で一番サッカーで成功したと言っても良いだろうと思える、突然旅に出るといってサッカー界からいなくなった若者も、ベースは「基本追求型」であった。
基本技術のスペシャリストで、基本を忠実にプレイする難しさを実践して、世界へ羽ばたいて行った。
同じくオーシャンズのフットボールも、基本型だと捉えてもいいのではないだろうか。
必要な所で必要な技術を駆使し、必要な選手が必要なプレイを選択する。

あえて言うならば、フットボールの原点はマッチアップにこそある。
同じ人数で戦ったチームの、全ての選手が1対1の局面で勝てるのならば、間違いが無い限り試合には勝つ。
最悪でも危険な場面で負けることなく、大切な場面で勝っていけば、それでも勝ちは必然となる。

さて、「動かない事が面白くない」とは。
「面白くない」は主観であるから、そう感じない人に「感じろ」というつもりはない。
ただ、3冠を獲得したチームの、その内容を評価するにあたって、「面白くない」というのはいかにも本質から外れる。
「点が入るから面白い」と感じている人には、凌ぎを削ったスコアが1対0の試合は面白くないかもしれない。
過去にファイルフォックスがスエルテバンフを1対0で破った全日本の決勝戦は面白くなかっただろうか。
私は非常に面白い試合だったと感じている。これもまたフットボールの醍醐味だと。

 今、オーシャンズに「確かに強いけれど動かないから面白くない」というのは、本末転倒だろう。
動かなくても勝てるなら、それが勝利への必然となる。
もっと動かなければいけないのは、どちらかと言えば、それに負けていくチームでは無いだろうか。

個で勝てるなら個で勝つ。
個で勝てないから組織で勝てる勝負を作る。
組織に組織をぶつける。
組織を個で破る。

そうやってフットボールは進化してきた。
時代によってスタンダードは変化する。

オーシャンズのフットサルは古いのではなく、時代の変わり目に現れた、また新しいフットサルなのかも知れないと感じることも大切ではないだろうか。
動かない、それでも「強い」個を、組織で破るチームが現れた時に、またオーシャンズも変化するのかもしれない。

冒頭で、アルゼンチンの英雄を例に挙げた。突出した「個」であった彼を封じるために、ロッソネロと言われる赤と黒を身に纏った集団は、3人のオランダ人と、母国代表のDF陣で、ゾーンプレスというスタイルを完成させた。
そしてそれはその後、若干の形こそ変えながら世界のスタンダードへと移っていった。
それを境に、ファンタジスタと呼ばれる人種やウイングと呼ばれるサイドアタッカーは冷遇されていくこととなる。
突出した個ではなく、規律を伴った集団を形成できる選手がのぞましいとされた。
時代の中での、個から組織への変化である。

さらに時間が経過すると、再びサイドアタッカーやファンタジスタが現れる。
組織を個で打開する選手達である。
ルイスフィーゴ、デビットベッカムなど、世界で高額な値がついた選手は、そのほんの少し前には「古い」タイプとされたプレイスタイルの選手では無かったであろうか。

スタンダードは変化する。

その後、「マルチロール」「ポリバレント」という聞き慣れない言葉で表されたが、これは「組織」の様々な役割を流動的にこなす選手を指す。日本では「組織」の時代に入りつつある。

フットサルでも同じ事が言えるのではないだろうか。時代と共にスタイルは変化し、スタンダードも変化し、また進化する。

オーシャンズの「個」
それでは世界のスタンダードに逆行する。と言う方もみえるかも知れない。
それは、今は仕方の無いことではないだろうか。日本はそれだけ遅れていると受け入れないと先へは進めない。
それならば、強豪諸外国が何十年もかけて移り変わってきた進化を、日本はもっと速いサイクルで廻していくしか無いのではないだろうか。

近道はない。

個を上回る組織力と組織力をはねのける個というサイクル。
今、オーシャンズの動かないフットサルは古いと言うのであれば、組織力をアップしそれをはねのけなければいけないのは他のチームの課題である。
そこから必ず進化が始まる。日本フットサルもFリーグも。

もうひとつ。
「オーシャンズはフィジカルのチーム」「2部練習出来る環境があるから」「プロだから」
本当にそれが負けたチームの敗因なのだろうか。
単純にフィジカルで負けるなら、フィジカル勝負をしなければ良いのではないかと感じる。
さらに、フィジカルで負けるチームに「動かない」というのは矛盾も感じる。
2部練習という環境だって同じ事だろう。
実際、プロという立場でなく、他に仕事を持っている選手は1日2回の練習は物理的に不可能かもしれない。ただ、それなら1部での練習をそれだけ大切に取り組んで来たのかどうかを振り返って見てはどうだろう。
1部の練習しか出来ないからこそ、本当にそれを大切にしてきたのかどうか。
簡単に、何度も、遅刻をして時間を無駄にしてきた選手は、代表者は、いないだろうか。
2部練習のチームに勝つために、1部しかない練習を真摯に取り組んで来たのか。
もう一度振り返ることも必要ではないかと感じる。
フィジカルだって同じ事。2部でびっちり取り組めないからこそ、自分のフィジカルを大切に感じて来たのかどうか。
つい遅くまで飲んでしまい、終電で帰る。翌日からだがだるい。体調管理を行っていないか。チームはそれを許していないか、見逃していないか。それだって立派なフィジカルへの取り組みだと感じる。
なぜなら彼らは「アスリート」であるべきだから。
痛めた足を冷やす。クールダウンをしっかり行う。と同じように、夜しっかり寝る。体調を整えることは立派な体調管理。

名古屋という地に、突然このプロチームは現れた。他地域からやってきた選手で構成された。
それでもこの地のチームとなった。
3冠は、地元に誇りを与えてくれた。
みんな感じているだろう。「彼らは僕らのチームだ」と。

つまらないフットサルだなんて言っている間に、それを倒すことをもっと考えればいい。
フットサルを取り囲む全ての者が考える事は、
「なぜつまらないか」
でなく、「つまらなさに勝てない理由はなにか」「それなら、この先何をすればいいか」

こんな短い歴史の日本フットサルで、振り返る事ばかりでは先がない。

この、つまらなさを越えるチームは現れるのだろうか。いや、現れなければ未来もない。

フットサルライフ 07.05.22