[9.9浜松決戦] と[2.2沼津決戦]。奇しくも静岡の強豪が一戦をIBFOXのホーム浜松で、もう一戦をPraiaGrandeのホーム沼津で行うという日程になった今年の東海一部リーグ。
前年度優勝の大洋薬品がFリーグへとシフトし、実質的なディフェンディングチャンピオンとなったPraiaGrande(昨年2位)。
その上位2つともに黒星を付けた唯一のチームであり、さらに今期はIBFOXという最強のブラジル人チームと融合して上積みを図ったIBFOX Emerson FC。
明日の岐阜メモリアルセンターで始まる後半戦を前に、
今期の前半戦、一番の注目を集めたこの両チームの戦いを、今改めて振り返ります。

IBFOX Emerson FC(静岡県浜松市) vs PraiaGrande(静岡県沼津市)
静岡のみならず、東海のフットサルを共に牽引するこの両チームの対戦は、エマーソンFCの全勝と、PraiaGrandeの勝ちが無いことを知り、その意外とも言える事実に驚く。
いずれも全日本選手権全国大会出場経験を持ち、今では東海リーグを牽引する、同じ静岡を拠点にするこの両チームでも、浜松、沼津という位置的な違いもあれば、チームカラーも大きく異なる。
どちらかと言えば、「サッカー王国静岡=巧い」というイメージはエマーソンに強い。
逆にプライアは、その王国にありながらも昨年までは結果に恵まれず、あまり日の目を浴びることは無かったと言える。全日本の決勝まで進み、輝きを浴びるエマーソンに少なからず嫉妬を感じた事もあったであろう。
「自分達は巧くない。静岡には巧くて見栄えのする選手は沢山いるけど、自分達は違う。輝く実績を持つ選手もいなければ、巧い選手の集団でもない。でも、とにかく勝ちたい。だから敢えてどこよりも走る事を選びました。巧くなくても強い事を目指した。美しく勝つことより泥臭くでもいいから勝って結果を出したかった。」
どこよりも早くハイプレスを導入し、そのフィジカルの高さで注目を集めた昨年のプライアのインタビューで聞いたコメントである。
静岡にあり静岡でない。
王国でのコンプレックスからスタートしたとも取れるチーム方針が、逆に今、あまたのチームから羨望のまなざしで注目を集めるチームへと成長させることに成功する。
おそらく今、プライアのようになりたいと思うチームの数は昨年の比ではないだろう。
逆にエマーソンは「王国」というプライドを背負い続けてここまで来た。
静岡というプライドは、ことサッカー界において決して軽いものではない。
全日本準優勝の実績も持つこのチームは、昨年、全国の注目を集めるプロチーム[大洋薬品/BANFF]に唯一の黒星を付けるなど、しっかりとその実力を見せてきた。
交代要員が殆どいない試合でも、彼らがそれを理由に負けることが許されたことなど一度もなかっただろう。
今期、IBFOXという「経験」「人数」をさらに手に入れた彼らは、今期の優勝候補筆頭といってもよいはずだった。
この日浜松で行われた試合には、単に結果だけでないものが存在していたように見えた。
「ボール」を動かす事に秀でたエマーソンが、「人」を動かすことに秀でるプライアに敗れたのである。
本来であれば、このどちらもが非常に重要で、必要不可欠な事である。がしかし、一方で、どちらかに秀でる事が出来れば、ある程度の結果がついてくると言うのも事実である。
この日明らかにエマーソンは、プライアの「人の動き」に翻弄された。逆にプライアはエマーソンが「動かすボール」にさえついて行けるだけの運動量を「人」が演じた。
エマーソンのホームである浜松で行われたこの一戦、会場にはエマーソン側の応援が多く目についた。多くのブラジル人を抱えるエマーソンは、会場でも多くのブラジル人ファンを味方につけることに成功。会場は完全にホームと化した。
観客席には何台ものビデオカメラが設置され、この一戦の注目の高さがうかがえる。
エマーソンはベンチ前で円陣を組み、プライアは自陣第2PKを囲みいつもの瞑想に入る。
円陣が解かれると、プライア5/三輪が1人離れ、ゆっくりとゴールへと向かう。
祈るようにポストを右手でそっと触ると、駆け足でベンチへと戻った。
この日一番、いや東海リーグ前半戦でも最も観客を集めたと思われるこの一戦は、まずプライアグランジのキックオフで幕を開ける。
スターターはエマーソンが1/鈴木、5/マルコス、7/小嶋、10/マリーニョ、13/米田
プライアが12/藤原、4/増田、8/中沢、9/渡邉、18/大石という構成。
エマーソンはキャプテンをピッチに、プライアはベンチに置いてスタート。
開始1分、まずプライア増田がミドルを放つ。これをコースに入ったマリーニョがブロックし、コーナーに逃れると、30秒後、今度はそのマリーニョがプライアゴール前でボールをさらいに行き、こぼれ球に13/米田がシュート。これは惜しくも枠を外す。
2分10秒、プライアは左サイドを中沢が縦に突破しクロスを入れる。マルコスが必死にスライディングに行くがボールに届かず、ゴール前にグラウンダーのパスが入る。が、詰めた渡邉のスライも届かずラインを割る。
驚くことにこの時間、早くも選手交代を始めるプライア。まだ開始2分30秒を回ったに過ぎない。
9/渡邉に替え10/奥山を投入。
するとこの奥山がゴール前のこぼれ球を押し込み、いきなり均衡を破る。プライア先制ゴール。
追い上げたいエマーソンは4分、米田が相手ゴール前で倒されFKを得る。がこれも決められない。
プライアは草場を投入、さらに渡邉を戻し、ピッチには2,3,9,10番
エマーソンも負けじと総力戦に入る。米田に替え犬飼を投入すると、大貫ビクトル、和泉を投入。
ピッチには7,8,9,19番
お互い、交代のペースが異常に速い。
5分にさしかかる頃、エマーソンはGKがエリアを出てしまいハンドを取られる。
このFKをプライア9/渡邉が直接狙うが、壁に当たり跳ね返されると、2/増田が再度打ち込む。
またもや相手のブロックにあったボールは、遂にエマーソンに拾われる。
カウンター!と会場がざわついた瞬間、エマーソンの縦へのフィードを粘ったプライア渡邉がスライでブロックする。
これを右サイドで拾った14/加藤日登が相手を引きつけると左に折り返す。
起き上がってパスを待っていた渡邉にボールが渡り、そのまま放たれたシュートはキーパーの手を弾きゴールへと転がった。
プライア早くも2-0とエマーソンを突き放す事に成功。
その後も目まぐるしく選手を替えるプライアは、およそ3分強で新しい選手を送り込んでいく。
いわゆる「セット」という交代ではなく、次から次へとピッチになだれ込んでくるといった様相に近い。
エマーソンは早くもGKを交代する。1/鈴木に代わり、20/都築を投入。BANFF、CIBRASIL、CASCABEL AICHI、エマーソンと東海リーグを知り尽くしていると言えるベテランの投入で、これ以上の失点を避けたいエマーソン。
しかし、8分30秒を過ぎた頃、エマーソンのシュートをキャッチしたプライアGKの藤原がすかさずパントキックでゴールを狙うと、放物線を描いたシュートは伸ばした都築の手をかすめてゴールへ吸い込まれた。会場もどよめく藤原のシュートで、なんと3-0とプライアがリードを拡げる。
ホームでこのままでは終われないエマーソンは何とか追い上げの糸口を探りたいが、プライアはベンチからも「下がるな!下げるな!」の指示が飛び、この時間でもエマーソン陣内で相手を追いかけ続ける。
落ち着きたいエマーソンに、その時間を与えようとしない。
そのまま一進一退の攻防が続くも時間は過ぎ、前半残り5分を迎える。
プライアは変わらず前からプレスに行く。増田もしくは関根1人がハーフ付近に残るのみで、守備でも相手陣内に殆ど全員が入ってプレッシャーをかけに行く。
大きく空いた裏のスペースはGK藤原の広い守備範囲でカバーしていく。中には第2PKを越えてクリアする事も。会場内にもワンサイドゲームの雰囲気が蔓延し始めていた。
ただ、エマーソンもこのままでは終わらなかった。残り5分を切った頃、珍しく前まで上がってきたマルコスが左サイドから左足トゥーでの強シュートを放つ。GK藤原も何とか弾くが、そのボールをゴール右隅で小嶋が詰める。
エマーソン、遂に追い上げのゴールを奪い3-1。
1分後、エマーソンは右サイドがら19/和泉が放ったクロスを、今度は小嶋が左サイドであわせるがシュートがやや弱い。タイミングがずれたGK藤原はやや後ろに滑り何とかキャッチする。このプレイに会場が沸く。会場内もエマーソンの追い上げを後押ししているかの雰囲気になっていく。
前半残り2分、プライアは奥山、渡邉、大石、奥山とダイレクトを3本つなぎシュートを狙うも、都築の好セーブに阻まれる。
ここでエマーソンは5ファール。プライアは4つ。
残り30秒に差し掛かると、エマーソンは左サイド前方でキックインを得る。
キッカー和泉は後方のマルコスに落とすと、マルコスは中央に陣取る犬飼にパスを送る。
それを受けた犬飼は相手を背負ったまま、右足アウトで素早くターンをすると、シュート。
前半終了間際、エマーソンが更に差を詰め3-2で前半終了。
後半そうそうエマーソンは7/小嶋が負傷退場。見る限り、追い上げのリズムに大きく効いていただけに、この負傷退場は痛く思えた。プライアゴール前では前半幾度となく相手を脅かすプレイをしていただけに、どう立て直すのかに興味がわく。
後半3分、左サイドから放たれたエマーソン犬飼のシュートを藤原が弾き、それを大貫が粘って押し込む。
遂にエマーソンが3-3と同点に追いつく事に成功。
一時はワンサイドの様相を見せたゲームが、後半再びスタートラインに戻される。
この辺りから、エマーソンは、8/犬飼、10/マリーニョ、9/大貫などの個人技での突破が目立ち出す。プライアの人に対するプレスの強さは、裏を返せばマッチアップで敗れた場合、カバーリングに瞬間的に遅れるというリスクも背負う。
度々中央を切り裂かれる場面が目立つようになる。
さらに5分30秒辺りでは、エマーソンが慌てるプライアに対し、逆に前からプレスをかける場面も見られた。
流れがエマーソンに傾いて来たかと思われた6分、プライアが右サイドからふわりとゴール前に送ったボールを、9/渡邉がバックヘッド。飛び出したGK都築も一瞬間に合わず、渡邉が頭に当てたボールはゴールへと転がった。
プライア再度リードを奪う。4-3
6分20秒、左サイドから中央の草場に預けワンツーで抜けた関根にグラウンダーの返球がピタリと合う。スライで合わせた関根のシュートはGKの股を抜き、ゴール。
プライア5-3。
9分、エマーソンは替わって入った10/マリーニョが足を痛め直ぐにアウト。彼のドリブルが良いアクセントをつけていただけに痛い。更に替わって入ったマルコスは休む時間が減り、運動量がどうしても落ちてしまう。この日エマーソンは小嶋、マリーニョと、良いアクセントを付けていた選手に対して運がなく思えた。
運動量の落ち始めたエマーソンに対し、プライアは徹底してサイドをワンツーで崩しにかかる。走り合いが始まってしまえば、この日はどうしてもプライアに分があった。
プライアは奥山、勝又のワンツーで崩して更に得点を重ねると、パワープレーに出たエマーソンのキックオフの隙を突き、更に7-3とリードを拡げる。
エマーソンも和泉のドリブルシュートで1点を返すが、追い上げもそこまで。
パワープレーでも、ベンチからの「キーパー、キーパー」という声が届かないエマーソンは、無理なドリブルを繰り返し、パワープレーのボールを奪われると、プライア奥山がロングシュートを決めて、8-4とプライアがこのゲームをものにした。
前半の首位攻防ハイライトとなった浜松決戦はプライアグランジに軍配があがり、順位が入れ替わる事となった。
点差こそ開いたが、力はそれ程までには開いていないと感じる。勝負を分けたものとは何か。
次の両チームの対戦は、プライアのホームとなる沼津での最終戦となる。
この時、この両チームの戦いが、優勝を争う「沼津決戦」となるのかどうかは、後半戦の戦いによるだろう。
もっと会場が埋まることで、変わるものがあると思う。
「声援を心強く感じた」というエマーソン小嶋ホームだったが、そんなホームだったはずの浜松は、プライアにとって完全なアウェーとはなりえなかった。
会場に出かけよう。良いプレイには歓声を、限界の先で選手にあと一歩走れる力を。厳しい目を。
次節東海リーグは9/23、岐阜メモリアルセンターで行われる。プライアは、大物外国人ドゥダを加えたMEMBER OF THE GANGとの対戦となり、エマーソンは、最近調子を上げているMATO GROSSOとの対戦となる。
出来れば東海リーグを、生で観戦に出かけて欲しい。
次節から出場可能の松本は、この日はベンチでサポートに徹した
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