ホームに首位浦安を迎えての上位対戦となったこのカード。
注目されたのは、この時点で『5』という名古屋と浦安の勝ち点差。負ければ、さらに『8』まで開き、優勝の可能性さえ消えてしまいそうな程追い込まれてしまうが、勝てばたったの『2』という、自力逆転が可能な所まで詰め寄れるという、優勝を占う天王山と言っても良いこの一戦。
結果的に名古屋は勝利し、その勝ち点差を『2』と詰め寄った。
この日の試合を通じ、目を見張ったのは、決定的な場面での丸山哲平のブロックや、中盤、自陣での体を張ったチェックなどで何度も見せた森岡薫の雄叫びなど、本来『ストライカー』である選手を含め、全員が行った献身的な守備面での貢献だろう。
この日の名古屋は、一貫して「全員で」という言葉が相応しい戦いを見せる。
試合は、開始早々のボラのゴールで名古屋が先制してスタートする。
実はこの日のスターターでは無かったボラだが、浦安のスタートのセットが攻撃的と見るや、マリオ監督はすかさずボラを投入し、攻撃に利点を見いだす事に成功。
この試合を通じたボラの活躍を見るに、この判断が絶妙であったことは言うまでもないだろう。
開始1分、やや右側でボールを持った森岡は右サイドラインを駆け上がる丸山を横目に、ゴール正
面やや左に位置したボラへとパスを通す。ボラの会心の一撃は、やや緊張感を持ってスタートした試合の雰囲気を一気にヒートアップさせる号砲となった。名古
屋はこの日の1stシュートがそのまま得点となる。
サポーターの元へ疾走するボラへ、他のFPも定永も駆け寄り喜びを爆発させる。
ただ、浦安も稲田(浦安20)の芸術的なシュートで、一発で試合を振り出しに戻す。
ハーフライン付近で右サイドを駆け上がる稲田を見た稲葉(浦安17)は、ピンポイントの浮き球でパスを送る。稲田はそれを見事にボレーで合わせ、名古屋のゴールを割ることに成功。
必死に反応する定永も、さすがにこれは止めることは出来なかった。
1-1。ホームといえども簡単には勝たせて貰えない。
この辺りから試合の展開が明確に現れ出す事となる。
敵陣ゴールラインから10Mとなる第2PKの辺りから、ゾーンでのプレスをかけ始める浦安は、名古屋の1stパスからの展開力を抑えることにほぼ成功を見せはじめる。
また、浦安は攻撃に
関してはハーフ付近でのポゼッションを上げるも、最終的には名古屋のプレスを縦へ引きずり出すと、一旦GKの川原に戻し、そこからロングフィードで前線の
Pivoに楔を供給するというパターンを繰り返す。
この日浦安は、組み立てて攻撃するという回数よりも、圧倒的に川原からのロングフィード、ロングスロー
でのPivo当てと、ハーフライン中央付近、もしくは自陣からサイドラインを駆け上がった選手への裏へのフィードというたった2つの展開を、徹底して見せ
る事となる。
敵陣奥深くで名古屋のポゼッションを奪う事、カウンターで明確にサイドの裏を取るか、長い楔をPivoに当てると言う事を全員が高い意識で演じ、前半に至っては確実に浦安がプラン通りの展開を見せたと言っても過言では無かっただろう。
浦安にとって唯一計算外だったのは、この日圧倒的な存在感を魅せたボラだったのではないだろうか。
前回対戦ではシュート6本、うち前半3本というボラであるが、この日はシュート数は7本とそれ程変わらないものの、うち前半が6本と、完璧なリーディングシューターとなる。
他にもマルキーニョスとラファエルが4本、森岡が3本と、この日は全体的に名古屋のシュート数の多さは目立つが、ボラは、それ以外でも、サイド突破や、ライン際で岩
本(浦安10)を相手にしてのファルカンフェイントの2連発や、繰り返し魅せるドリブルでの跨ぎなど、1人フィールドを泳ぎ回っているという印象を受ける
ほど、活き活きとプレイしていた。
名古屋は自陣でのプレスを受け、さらにハーフ付近でのポゼッションもやや浦安に分があるように見えたが、1本ハーフを越えると俄然名古屋に傾くという、見ている方にはハラハラさせる好ゲームの様相。
前半7分、ラファエルのシュートでCKを奪うと、小山のシュートは、一旦は反応した川原の脇を抜けコロコロとゴールに吸い込まれた。
名古屋2-1と再度リードを奪うことに成功する。
9分、浦安の3-1でのカウンターに、名古屋サポーターも一瞬肝を冷やすが、この決定的なチャンスを浦安は決めきれない。
ただ、名古屋も浦安の前からのプレスになかなかパスコースを見つけることが出来ず、同9分にはキックインで2度目の4秒ルールの適用を受けるなど、浦安のディフェンスも巧く機能を見せていた。
また、浦安は川原からのフィードやロングスローで楔を入れることで、名古屋のチェックを自陣までは確実に押し込む。加えて前からのプレスを掛ける事が巧く絡み合い、比較的多くのプレイが名古屋側の第2PKライン付近で行われていた。
これに関しては浦安もプラン通りに進んでいたことだろう。
ただ、この日の名古屋はいつもより比較的早い時間に対応を見せたように感じる。
10分辺りから、若干プレスのラインが前に上がったように見えた。
逆に浦安はプレスが前に来た頃から、ライン際を飛び出した選手へのループでのフィードを見せ始め、追い上げのゴールと同じく、稲葉から浮き球で出されたパスに今度は市原が飛び出すなど、丁寧に名古屋のスカウティングを行っていることをうかがわせた。
一旦タイムアウトを挟み、名古屋が森岡、北原と繋ぎシュートを放つと稲田(浦安20)がブロック。
逆に浦安は、何度も繰り返されるGK川原からのロングキックに稲田、高橋らが繰り返しヘッドで合わせるも、これはゴールならず。と、一進一退の攻防を繰り返す。
名古屋は上澤、森岡、ボラらがライン際で果敢に突破を見せ、局面の打開を図るがいずれも得点には至らない。若干一カ所で持つタッチ数が増え、動きが減り出すと浦安のプレスに捕まるシーンも見られ始めた。
15分、マルキーニョスを投入。攻守を全員が行うプレイを続ける名古屋は、昨年と違い局面局面でマルキーニョスに頼らずここまで試合を運んだことに改めて気付く。
逆に、こういう展開になってくると守備に不安が残るマルキーニョスよりは、ボラの献身的な運動量の方が非常に重宝される事になっていくだろう。
この日は明確にボラ>マルキーニョスという展開となっていた。
さらに投入されたマルキーニョスの不用意なファールで名古屋は5ファールとなってしまう。
途端に浦安はプレスを増し、玉際を多く作りに来るが、逆に前田が巧く浦安のファールを誘い、嫌な流れを切る事に成功する。この辺りはさすがベテランという感じを受けた。
16分、マルキーニョスが胸トラップからのボレーを見せ、こぼれ球を前田が詰めCKを奪う。
ラファエルがたてつづきにシュートを放つなど、名古屋も浦安の反撃を返していく。
18分、GK川原からのロングキックに名古屋ゴールやや左、頭で折り返した浦安の絶好のチャンスは、中島(浦安7)のトラップが流れてしまい、名古屋はピンチを凌ぐ。
残り2分を切った頃、浦安はパワープレーに出る。
GKで入った岩本は攻撃が終わると正GKとチェンジをしようとベンチに走ろうとするが、ボールを持った名古屋GK定永は遠く岩本に目を合わせ牽制すると、交代を躊躇させる事に成功する。
目立たないシーンではあるが、この定永のファインプレーにより、ゴールにこそならなかったが、マルキーニョスとGKに残った岩本の1対1など、浦安をピンチに追い込んだことは非常に素晴らしいプレイだったと言えよう。
前半、名古屋は浦安の前からのプレスに苦しむこととなる。第2PKライン辺りでGKからのボールを受け、そのまま困ってしまう場面が度々見られた。逆に浦
安はハーフ付近でのポゼッションを、GKの川原を使うことでものにし、GKからのロングスロー、ロングフィードや、ロビングでの長いワンツーなど、球足の
長い攻撃で名古屋を押し込む事に成功する。
結果、攻撃の終わりも守備のスタートもほぼ同じ位置に揃える事が出来、比較的長い時間ゲームをコントロールする事が出来たように映った。ただ、名古屋が一
旦ハーフを越えると、組み立てでのタッチ数の多さと逆に、ツータッチ以内での展開力を見せ、先制点のように流れるようなパスにより得点の部分で浦安を引き
離した。また、ボラを筆頭に、局面でのマッチアップに攻撃力を見せ、逆に守備では全員が気持ちの入ったプレイを続け、前半をリードで折り返すことに成功し
た。
ハーフタイムに戻るシーンでも、マリオ監督が作戦ボードで森岡に指示を与えながら移動を見せたり、ゲーム中でもベンチ裏で交代選手が入念にコミュニケーションを取るなど、『チーム』としてのまとまりが光った。
後半、浦安の川原、小宮山、中島、岩本、市原 というセットに対し、名古屋は定永、北原、丸山、森岡、ボラ。
浦安がまだ現れる前から5人はピッチに入って待つなど、この試合に懸ける意気込みがヒシヒシと伝わって来るようだった。
北原が入ることにより、テンポが良くなる事が判る。比較的少ないタッチ数での展開を繰り返す北原と、森岡、ボラらのバランスは妙味となって現れる。
また、後半から名古屋、浦安ともにジャッジへのアピールが増えていくことになるのだが、審判に詰め寄る森岡を素早く丸山が制するなど、チームとしてのバランスが非常に良い。
比較的接触が多かった試合となったが、結果的に警告は北原の1枚のみと、ダメージを最小限にとどめたことは進歩と言って良いだろう。
後半3分、ボラの単独でのカウンターに市原(浦安4)が反応するも、ボラの切り返しに完全に振り切られる形となる。追加点を冷静に右隅に流し込むと、サポーターの興奮も最高潮となる。
また、ボラはマッチアップでの足元だけでなく、スペースも巧く使った。浦安のゾーンディフェンスに対し、裏で藤井を振り切ると、北原からパスが供給される。
このシーンでは川原の絶妙な飛び出しにカットされたが、ボラはゾーンのギャップを巧く作り、また北原もそれを見逃さなかった。非常に見応えのあるシーンだった。
8分過ぎ頃から、若干撃ち合いの様相を見せ始める。残念ながらこの時間帯のバタついたゲーム展開は昨年まではあまり見かけることは無かった。勝っているときのリスクを持った攻撃をシーソーで繰り返す事がやや見られる点は、今後の課題なのかも知れない。
『強い名古屋』の復権という点では、この時間帯のようなファンのハラハラさせ方は、少しでも減っていくことを望む。
残念ながら10分、稲田自身のシュートのこぼれ球を再び蹴りこまれ2-3と追い上げられる事になるもの、単に失点シーンだけに原因があるわけでは無いように感じる。
7分過ぎにはボラがフリーでのカウンターを外したりと、決めるところで決めていればという感も残る。ただ、この時点でファールが浦安3に対し名古屋2と、まだ強く当たれる事がせめてもの救いだったと言えよう。
後半11分、右サイドから放った北原のシュート(クロスへのパスに見えたが)がスライでのブロックに来た藤井(浦安8)の足をかすめ方向を変える。既に反応してしまっていた川原の逆をつき、ゴールに吸い込まれる事となった。
これで4-2と名古屋2点のリード。
名古屋のキャプテンはサポーターの元へ駆け寄ると、観客席に向かい飛び上がってガッツポーズを見せた。
後半12分、浦安のパワープレーに対し、名古屋のベンチも動きを見せるが、比嘉は着替えたのみで実際にはパワープレーは行わなかった。
マリオの素早い対応と心理戦が非常に興味深く映った。
残り5分になると、やや疲れも見え始めるが、前田らが「切らすな!切らすな!」「集中!我慢!」とベンチから声をかけ続け、勝ちに対して一丸となった執着心を見せた事も、今後にとって非常に心強い一面を見ることが出来た。
最後に相手のチェックに入った森岡が突いたボールが浦安のゴールに吸い込まれて行き、さらに得点を重ねたかに見えたが、残念ながら最後の最後で枠をそれていってしまった。
試合後、マリオ監督からも発せられた「これだけのカードであれば5,000人クラスの会場でも良かったと思うが、キャパの少ない会場であった事が残念」と言うように、入場者数934人と言うのは、それでもこの会場のほぼ満員という残念な現実も今後の課題と言えよう。
これで名古屋は勝ち点差『2』で浦安を追撃する態勢が整った。お互いが残り全勝でも、最後の直接対決に望みが残る。しかも、浦安にとっては1つ取りこぼせば首位がひっくりかえる可能性を考えると、確実に毎節のプレッシャーをかけ続けられる事になるだろう。
負けられないプレッシャーには名古屋は強い。全てを乗り越えた昨年得た物が、これから存分に活きてくることだろう。
『首位名古屋』もそれ程遠くはないと感じる。
ただ一点、この役割が目まぐるしく変わる展開の中、昨年の名古屋の顔とも言えた上澤だけが、どうも不調に見えたのは私だけではないように思う。
パスカットされたり、ドリブルをカットされたりと、ここまでもがく上澤を見ることになるとは正直思わなかった。勘違いであればそれでいい。
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